予備試験内容の詳細

予備試験の3つの壁

試験科目について

傾向と対策(出題形式と突破のポイント)

各試験の通過率(合格率)

試験会場について

予備試験は体力勝負

予備試験の3つの壁

短答式試験

短答式試験は、毎年7月の中旬頃実施されます。
短答式試験の試験科目は、民法・刑法・憲法・民事訴訟法・刑事訴訟法・行政法・商法・一般教養の8科目です。
出題形式はマークシート方式(選択式)の試験で、各設問につき、正誤の判断が問われます。

集合時間 着席時間 試験科目
8:45 9:45〜11:15(1時間30分) 民法・商法・民事訴訟法
  12:00〜13:00(1時間) 憲法・行政法
  14:15〜15:15(1時間) 刑法・刑事訴訟法
  16:00〜17:30(1時間30分) 一般教養

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例年の短答式試験の時間割は上記のとおりです。
問題の数は、各科目によって異なります。
法律基本科目のうち、公法系(憲法・行政法)の問題数は各12問、民事系(民法・会社法・民事訴訟法)の問題数は各15問、刑事系(刑法・刑事訴訟法)の問題数は各13問あります。
一般教養科目については、全40問の中から20問を選択して回答する必要があります。
配点については、法律基本科目は各科目につき30点満点、一般教養科目は60点満点となっており、合計270点満点です。

六法の持ち込みは認められていません。

論文式試験

論文式試験からは、全部で10科目出題されます。短答式試験と重なる科目もあります。
以下の表(令和6年度予備試験論述式の試験日程と試験時間)を参考にご覧ください。

試験日 試験時間 試験科目
9月7日(土) 9:30~11:50(2時間20分) 憲法・行政法
  13:15~15:35(2時間20分) 刑法・刑事訴訟法
  16:30~17:40(1時間10分) 選択科目
9月8日(日) 9:30~12:30(3時間) 法律実務基礎科目(民事・刑事)
  14:00~17:30(3時間30分) 民法・商法・民事訴訟法

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論文式試験は、その名の通り、論述式によって解答する試験です。

科目ごとの試験時間
試験時間を踏まえると、法律基本科目(憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法)については1科目70分程度、法律実務基礎科目(民事実務、刑事実務)については1科目90分程度、選択科目については70分程度が割り当てられています。

解答用紙について
解答用紙は、1科目につきA3サイズの答案用紙が1枚配布されます。
答案用紙はA4サイズの回答欄が両面に4ページ分あり、合計10枚が配布されます。

筆記用具について
使用できる筆記用具については、黒インクのボールペン又は万年筆(インクが消せないものに限る)となっていますので、ご注意ください。

口述試験

口述試験は、予備試験の最後の関門である試験となります。
例年1月頃に実施されます。
短答式試験、論文式試験を突破してつかの間、すぐに口述試験が控えています。
口述試験では、主査、副査の試験官2名と対面にて、口頭で質疑応答をする試験形式で行われます。
試験科目は、法律実務基礎科目のうち、民事と刑事の2つとなっており、2日間にわたって実施されます。
例年、合格点は、119点以上となっています。
この口述試験に合格すると晴れて予備試験合格となります。

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試験科目について

予備試験で出題される各科目について、簡単にご紹介します。

憲法

最近では同性婚に関する憲法訴訟をニュースなどでよく目にしますが、予備試験の問題でも、まさにこのように、ある法律や条例などが憲法に違反するのか、しないのかを論述する問題が出題されます。

憲法の勉強のコツ!

予備試験の短答試験の特徴は、“具体的な事例に対する人権侵害が違憲となるかどうか”という観点から問題が出題され、統治分野は条文知識が出題される。

憲法学習のポイント
①基本原理から思考する骨太な視点
②人権保障のための統治である
③判例の『判断枠組み』を理解する
④人権の種類、性質を理解すると同時にその大切さを実感する
⑤権力による人権制約の態様を理解する
⑥制約が許容されるか否かの判断方法を理解する

予備試験の憲法『短答』対策
①判例学習
②条文の素読
③過去問を徹底して行う事が大切

予備試験の憲法『論文』対策
①論証集の活用
②答案構成スキルUP
③過去問をこなす事が大切

憲法特有の答案の型を演習などを通して早い段階で身につける

行政法

行政法は、あまり馴染みがないかもしれません。予備試験では、行政事件訴訟法や行政手続法など、行政に関連する複数の法律が出題されます。実際に「行政法」という名前の法律はなく、行政に関連する複数の法律をまとめて行政法と呼んでいます。
問題としては、例えば、ある事業者が産業廃棄物処理場の設置の許可を申請し、許可をもらったものの、許可の申請にあたって複数の法律違反をしていた場合に、他の事業者や市民が許可処分の取消訴訟を提起することが認められるか、といった問題が出題されます。
行政法の特徴としては、様々な法律からの出題がされるので、例えば上記の問題で言えば、廃棄物の処理及び清掃に関する法律が参照条文として出題され、その法律に関連する事例問題が出ることがあります。
ただ、個別の法律まで丁寧に学習しておく必要があるわけではなく、法律の仕組みそのものについて一定程度理解しておけば足ります。

行政法の勉強のコツ!

・個別法については、過去問や演習を通して学習をしていく方が理解が進む
・出題頻度の高い「処分性」「原告適格」「裁量論」については、定義も含め、判例を通して理解を深める
・暗記する量は他の科目に比べて少ない分、頻出論点については、他の受験生に相対的に負けないために演習(過去問含め)をこなすことがとても大事

刑法

例えば、AさんがBさんの胸に向かってナイフで刺し、Bさんが死んだとします。この場合にAさんには何罪が成立しますか?
刑法では、このような問題が出題されます。もちろん、実際の試験では、より複雑に問題が構成されており、何罪が成立するのか迷うような問題が出題されます。刑法は、他の科目に比べて馴染みのある法律かもしれません。

刑法の勉強のコツ!

・刑法の短答試験対策の一環として「条文の素読」がおすすめ

・刑法の論文対策には
①問題分析能力
②条文適用能力
③答案作成能力
の3つを鍛えていく事が必要

・論文対策ツールとして論証集が有効!
①『論点』を理解する
②『キーワード』を覚える
③論点とキーワードを盛り込んだ論証パターンを身に付ける事が目的だが、丸暗記はNG

・論文試験を突破するためには、
①問題提起
②規範(判断基準)
③あてはめを正確にできる事が必要

・合格レベルに達するには、『基本概念の定義や規範は書けて当たり前で、いかに適切にあてはめて評価(認定)できている、その評価(認定)の方法は間違えていない』事が必要

・過去問は最強の勉強法!旧司法試験の過去問を積極的に活用しよう

刑事訴訟法

刑事訴訟法は、簡単にいうと、捜査から刑の執行までの一連の手続きを定めた法律です。
例えば、逮捕に関する要件や、公判廷(裁判)での手続き、など刑事事件にまつわる手続きを定めた法律です。
問題としては、例えば、現行犯逮捕の適法性や、ある供述に基づいて証拠を発見した場合に、その証拠能力があるといえるか、といったことが問われます。
手続きに関する法律なので、各条文も細かく、最初は難しく感じるかもしれませんが、手続きの流れを図で理解するとイメージしやすいかもしれません。

刑事訴訟法の勉強のコツ!

・まずは刑事訴訟法の一連の手続きの大枠を把握すると理解が進む
・出題頻度の高い伝聞証拠は過去問を必ず解きながら出題傾向をつかみましょう
・刑法と同様にあてはめがとても重要(大きな得点源になる)
・出題頻度の高い令状主義や強制処分法定主義などの原理原則について、判例を読み解きながら正確に理解しましょう

民法

民法は、私人と私人、つまり個人間の関係を規定している法律です。
予備試験民法では、主に個人と個人との間で紛争が発生し、その紛争を解決する方法として、何ができるのかを問うてきます。
例えば、物を失ったとか、自分が所有している土地を誰かが勝手に使用しているというような場合があります。
そして、その人が「物を返せ」とか「この土地から出ていけ」などそういう主張をします。
このように、民法の問題では、誰かが何かしらの不利益を受けていて、この時に民法を参照しながらその個人のために何ができるのかを考えるのです。論文試験ではこうした事例が問われます。

民法の勉強のコツ!

・短答対策・論文対策のいずれにおいても重要なのは過去問を解くこと
・短答対策としては、分野をセットで勉強するのがおすすめ
・論文対策(短答対策としても)としては、要件効果を意識しながら勉強することがおすすめ
・商法・民事訴訟法・法律実務基礎科目(民事)との相互関係を意識しながら学習を進めましょう

商法

予備試験商法からは、商法・会社法・手形法から出題されます。
短答式試験、論文式試験では会社法からの出題が最も多くなっています。
例えば、とある取締役が粉飾決算をしていることに気づきながら、別の取締役がこれを放置していた場合の取締役の責任といった問題が出題されます。
会社法は民法の特別法になります。つまり、民法の一般原理のもとでは、外れた事例について会社法が適用されます。会社法と民法で同じことが書いてあったら特別法である会社法が適用されるということです。

商法の勉強のコツ!

・予備試験短答式突破のカギは、過去問を解くこと
・商法が苦手な方は、民法の勉強が一通り終わってから学習するのがおすすめ
・条文の勉強は、条文の制度趣旨を含めて勉強すると定着しやすい
・実務をイメージすると商法は理解が進む

民事訴訟法

民事訴訟法は、刑事訴訟法と同様に手続きに関する法律です。例えば、当事者が何か訴えたいという時に、そのルールを決めているのが民事訴訟法になります。
問題としては、例えば、AさんのBさんに対する不法行為に基づく損害賠償請求について、これを認容する判決が出た場合に、Aさんが金額を増額した上で、再度同じ請求をすることができるのか、などといったことが問われます。
刑事訴訟法は刑事裁判に関する手続きを定めた法律であるのに対して、民事訴訟法は民事裁判に関する手続きを定めた法律です。例えば、離婚訴訟、損害賠償請求訴訟などです。
初めて勉強する方は民事訴訟法が一番難しく感じるかもしれませんが、図を見ながら手続きのイメージを掴めることができれば、理解が進むでしょう。

民事訴訟法の勉強のコツ!

・短答対策・論文対策のどちらにおいても、過去問を早めに解くことが重要
・短答対策として、判例の論理の流れを理解すること、条文知識は法律全体の流れをまずは理解することが重要
・論文対策として、過去問を解きながら、基本概念の理解を深めること、要件事実をおさえておくことが重要
・民法の知識も前提として必要になるため、民法を先行して勉強してから民事訴訟法を勉強しましょう

法律実務基礎科目(民事・刑事)

法律実務基礎科目は、簡単にいえば、裁判実務についての学習が中心となります。裁判官、検察官、弁護士それぞれの立場に立った裁判実務を勉強していきます。
問題の出題も、それぞれの立場に立って解答させる問題が出ます。
民事に関していえば、実体法である民法と手続法である民事訴訟法の理解が必須といえ、刑事に関して言えば、実体法である刑法と手続法である刑事訴訟法の理解が必須となります。
これらの科目の学習を先行すると、法律実務基礎科目の学習も進みやすくなります。

法律実務基礎科目(民事・刑事)の勉強のコツ!

・民事では、要件事実の理解がとても重要なので、民法の学習を進めつつ、要件事実の学習もやりましょう
・刑事では、刑法・刑事訴訟法の理解を前提としながら、法曹三者それぞれの観点からの活動について問われるので、事実認定だけでなく、手続きの流れを理解しておくことも重要
・民事・刑事いずれも過去問を何度も解くことがとても大事

選択科目

2022年度予備試験より、選択科目が論文式試験に追加されました。
選択科目は、倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系)の8科目から1科目を選択することとなります。

選択科目を選ぶ基準
①そもそも興味が持てるか
②勉強量の多さ
③基本書、参考書等の教材の充実度
④シェア率の高さ

慎重に検討する必要がありますが、まずは全く興味のもてない選択科目は最初に除外し、その残りの選択科目の中から、勉強量、教材の充実さ、シェア率、将来におけるニーズをそれぞれ考慮し、最終的に1つに絞り込んでみてはいかがでしょうか。

①そもそも興味が持てるか
当然の事ですが、興味がまったく持てない分野の勉強は、ただただ辛く長続きしません。
少なくとも、まったく興味がもてない分野の選択科目は選ばないようにしましょう。
ただし、勉強の中身がイメージとは異なる場合もあり、最初から「これはつまらなそう」などと決めつけずに、それぞれ選択科目では、どのようなことを学ぶのかを自分なりに様々な角度から色々調べてみることをおすすめします。

②勉強量の多さ
これは、非常に重要な観点です。特に、予備試験ルートで司法試験受験を目指す方は、社会人受験生の方も多く、選択科目の勉強に割く時間を法科大学院ルートの司法試験受験生よりも取る事ができません。
従って、なるべく勉強量が少なくても“合格レベル”に辿りつく事のできる科目がおすすめです。
一般的には、経済法、国際関係法(私法)は、他の選択科目と比較すると、相対的に勉強量が少なくて済むとされています。

③基本書、参考書等の教材の充実度
教材の充実度も重要な判断要素となります。ここは、次にご紹介するシェア率ともリンクします。一般的には、労働法、倒産法、知的財産法は他の選択科目と比較すると、相対的に教材は充実しているとされています 。

④シェア率の高さ

倒産法 3,056 18.30%
租税法 869 5.20%
経済法 2,268 13.58%
知的財産法 1,821 10.90%
労働法 6,139 36.75%
環境法 453 2.71%
国際関係法(公法系) 467 2.80%
国際関係法(私法系) 1,631 9.76%
合計 16,704 100.00%

参照:法務省「令和5年司法試験予備試験の結果について」

上記は令和5年司法試験予備試験の出願状況です。
労働法を選択する受験生が圧倒的に多いことがわかります。
司法試験の選択科目も予備試験と同様の科目から選択することになります。
ですから、司法試験受験を見据えて選ぶという観点も重要です。

選択科目の勉強のコツ!

・個別法については、過去問や演習を通して学習をしていく方が理解が進む
・出題頻度の高い「処分性」「原告適格」「裁量論」については、定義も含め、判例を通して理解を深める
・暗記する量は他の科目に比べて少ない分、頻出論点については、他の受験生に相対的に負けないために演習(過去問含め)をこなすことがとても大事

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傾向と対策

短答式試験の出題形式

平成25年憲法第2問
司法権に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。

ア.裁判官の罷免に関し弾劾裁判所の裁判の結果に不服がある場合に,最高裁判所に訴えることができるとする法律を制定することは憲法に違反しない。
イ.行政機関の認定した事実はこれを立証する実質的証拠があるときには裁判所を拘束すると定めた法律は,その実質的証拠の有無は裁判所が判断するとの規定があっても憲法に違反する。
ウ.特定の種類の事件だけを扱う裁判所を設置しても,その裁判所の裁判の結果に不服がある場合に,最高裁判所に上訴できるのであれば憲法に違反しない。

予備試験の短答式試験では、基本的には上の例のような正誤を問う問題が出題されます。
正誤問題にも種類があり、上の例のように、全ての選択肢の正誤がわからなければ正解できない問題と、5つの選択肢から正解を選ぶ問題もあります。
また、中には解答欄の括弧内に入る語句を選択させる問題や、各学説からどのような結論が導かれるかを答える論理問題も出題されます。

短答式試験突破のポイント

予備試験はとにかく範囲が広いので、直前期に詰め込もうとしても間に合いません。
短答式試験対策は、コツコツと問題を解いていくことが大切です。短答式試験の少なくとも半年以上前から、しっかりと問題演習を重ねていく必要があります。
また、予備試験全般で重要なことですが、過去問を何度も解くことが大事です。予備試験は試験範囲が広いとはいえ、同じような問題も何度も出題されています。また、初めて出題された知識であったとしても、過去問の知識の応用で答えることのできる問題も多く存在します。
したがって、短答式試験対策には、過去問を何度も繰り返し演習することが大切なのです。
過去問を何周も回していく上で、重要なポイントは、自信を持って正解した問題は、次回以降の演習から除外していくことです。こうすることで、2周目以降の問題演習のスピードが上がり、自分が理解ができていない箇所に集中した学習が可能となります。
過去問を解くことのメリットは他にもあります。
それは、勉強の対象を絞ることができるということです。
法律科目は、知識や判例が膨大にあります。これら全てを理解し、暗記しなければ、予備試験に合格できないというわけでありません。
過去問を解いていくうちに、何が一番問われていて、合格のために何が一番重要なのかが見えてきます。
資格試験の勉強では、初学の段階ではインプットばかりしてしまいがちですが、最初から知識を全て入れたり、暗記したりすることは難しいことですし、一定程度の理解が進んできたら、過去問を解いてみましょう。
そうすれば、必要な学習範囲が見えてきて、インプットすべき重要な判例や知識を優先して勉強していけば、とても効率的な勉強ができるようになります。

論文式試験の出題形式

平成24年刑法
以下の事例に基づき、甲,乙及び丙の罪責について論じなさい(特別法違反の点を除く)。
(前略)甲及び乙は,事故を偽装することにしていた交差点付近に差し掛かった。乙は,進路前方の信号機の赤色表示に従い,同交差点の停止線の手前にY車を停止させた。甲は,X車を運転してY車の後方から接近し,減速した上,Y車後部にX車前部を衝突させ,当初の計画どおり,乙に加療約2週間を要する頸部捻挫の怪我を負わせた。
甲及び乙は,乙以外の者に怪我を負わせることを認識していなかったが,当時,路面が凍結していたため,衝突の衝撃により,甲及び乙が予想していたよりも前方にY車が押し出された結果,前記交差点入口に設置された横断歩道上を歩いていたAにY車前部バンパーを接触させ,Aを転倒させた。Aは,転倒の際,右手を路面に強打したために,加療約1か月間を要する右手首骨折の怪我を負った。(後略)

予備試験の論文式試験は、A4用紙1枚から長いと数ページにわたる事例(具体的にどのような事件が起きたかが書いてあります)を読み、その上で、設問に答えていく問題が出題されます。
出題される範囲は、短答式試験に比べると限定されているということができ、同じ論点が繰り返し出題されることもあります。

論文式試験突破のポイント

論文式試験の対策としても、やはり過去問の演習が最も大切です。過去問を解くことで試験の傾向を掴むことができますし、アウトプットを重ねることで、知識の定着率が圧倒的に上がります。
最初は答案の書き方がわからず、手も足も出ないかもしれませんが、答案例を参照しながらアウトプットを行っていくとよいでしょう。また、過去問に挑戦する前段として、基礎的な問題も解くのが有用です。
論文式試験に必要な知識は実は多くありません。むしろ、「少ない知識をいかに使うか」がポイントです。
予備試験に上位で合格した方の答案を見ると、決して多くの知識を見せびらかすような答案ではありません。少ない知識を正確に用い、答案に表現する力が圧倒的に優れているのです。
予備試験に短期での合格を目指す場合、知識のインプットと同時に論文式試験対策を行う必要があります。
具体的には、各分野(例えば、憲法の「人権」)の講義を一通り終えた段階で、基本的な問題(基礎問)について答案を書き始めてください。最初は模範答案を写すことからで構いません。知識のインプットと同時に演習を進めることで、論文式試験対策に十分な時間を確保することができます。また、インプットとアウトプットを交互にやることで記憶の定着にも繋がります。

口述試験の出題形式

平成28年予備試験口述試験再現
主査:それでは事案を読み上げるのでよく聞いていてくださいね。わからないことがあったら、聞き返してもらって構わないのでね。Aは銀行で他人に譲渡する目的を有しながら、自己名義で通帳とキャッシュカードを申請して交付を受けました。事案は大丈夫ですか?
自分:はい、大丈夫です。
主査:では、この事案でAの罪責はどうなりますか?
自分:1項詐欺罪が成立します。
主査:ということだね。今、1項詐欺罪、つまり財物が対象になっていると言ってくれたんだけども、通帳やキャッシュカード、これら財物って言えるのかな?
自分:はい。通帳やキャッシュカードは、すぐにお金を下ろすことができるという地位を伴わせるもので、財産的価値が認められため、財物と言えます。

予備試験の口述試験は、主査・副査の2名と問答を行う形で進められていきます。主に主査からの質問が多く、副査は補助的な質問を行う場合が多いようです。
口述試験では、刑事実務基礎科目・民事実務基礎科目の2科目が2日に分けて出題されます。刑事実務基礎科目では、犯人性や刑事訴訟の手続に関する問題が、民事実務基礎科目では、要件事実や民事保全・執行に関する問題が出題されます。

口述試験突破のポイント

口述試験では、民事保全法や民事執行法、要件事実など、短答式試験・論文式試験ではほとんど問われることのない箇所についての質問が一部なされます。
口述試験の合格率は極めて高いですが、知識に抜け漏れがあると、一気に低い評価がつく可能性がありますので注意が必要です。
また、口述試験は論文式試験の合格発表日から約2週間しか準備する期間がありません。あまり早くから始める必要はありませんが、特に口述が苦手な方は、合格発表日まで待っていては間に合わない可能性があるので、余裕をもって論文式試験が終わった直後から対策を始めましょう。
口述試験の試験科目である民事実務基礎科目は民法・民事訴訟法の、刑事実務基礎科目は刑法・刑事訴訟法の知識が必要となってきます。
口述試験対策のためには、知識を瞬時にアウトプットできるようになる必要があります。口述試験は極度の緊張状態で行うわけですから、不確実な知識のままだと、「頭が真っ白になって答えられなかった」といった事態になりかねません。
定義・論証など、論文式試験までの学習で積み重ねてきたノートや単語帳・論証集や定義集などを用いて最後の確認を行ってください。

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試験の通過率(合格率)

短答式試験の合格率

合格率は毎年20%程度であり、予備試験の最初の関門といえます。
短答式試験の点数は一般教養が60点、法律7科目は各30点ですので、合計270点満点です。
予備試験は相対評価試験となっているので、合格点は毎年受験生のレベルによって変わります。例年の合格点は、160点から170点程度であり、だいたい6割程度の点数を取ることができれば突破できる試験となっています。

論文式試験の合格率

論文式試験の合格率は、18%前後と、短答式試験の合格率とほぼ同程度となっています。最も、短答式試験を突破した者の中から更に人数が絞られるので、実質的には予備試験の中で最も難易度が高い試験といえます。

口述試験の合格率

口述試験の合格率は約95%と、これまでの短答・論文の合格率に比べ、かなり高い水準となります。
ただ、論文式試験の合格者のみに課される試験であり、レベルは非常に高いので、油断は禁物です。論文式試験合格発表から試験実施まで 約2週間しかありませんので、しっかりと対策をしておく必要があります。

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試験会場について

試験会場を事前に把握しておくことはとても重要です。どの試験会場になるかは、受験票が到着するまで分かりませんが、事前に下見をしておくと、試験本番のイメージがしやすいのではないかと思います。

短答式試験の試験会場

令和6年度予備試験短答式試験の試験会場は以下のとおりです。

(1)札幌市 北海道大学札幌キャンパス(札幌市北区北13条西8丁目)
(2)仙台市 仙台卸商センター 産業見本市会館 サンフェスタ (仙台市若林区卸町2-15-2)
(3)東京都

稲田大学早稲田キャンパス(東京都新宿区西早稲田1-6-1)

日本大学商学部(東京都世田谷区砧5-2-1)

立教大学池袋キャンパス(東京都豊島区西池袋3-34-1)

(4)名古屋市 愛知学院大学名城公園キャンパス(名古屋市北区名城3-1-1)
(5)兵庫県 関西学院大学西宮上ケ原キャンパス(兵庫県西宮市上ケ原一番町1-155)
(6)広島市 広島工業大学専門学校(広島市西区福島町2-1-1)
(7)福岡市 福岡工業大学(福岡市東区和白東3-30-1)

論文式試験の試験会場

令和6年度予備試験論文式試験の試験会場は以下のとおりです。

(1)札幌市 北海道大学札幌キャンパス(札幌市北区北13条西8丁目)
(2)東京都

ベルサール東京日本橋(東京都中央区日本橋2-7-1 東京日本橋タワー)

ベルサール渋谷ガーデン(東京都渋谷区南平台町16-17 住友不動産渋谷ガーデン タワー)

(3)大阪市 稲大和大学(大阪府吹田市片山町2-5-1)
(4)福岡市 南近代ビル(福岡市博多区博多駅南4-2-10)

口述試験の試験会場

令和3年度予備試験口述試験の試験会場は、以下のとおりです。

法務省浦安総合センター(千葉県浦安市日の出2-1-16)

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予備試験は体力勝負

予備試験は、短答式試験が実施される5月から、口述試験が実施される10月まで、約5か月にもわたる長期決戦です。
また、各試験の科目も多く、1日の試験時間も長いので、体力勝負ともいえます。
試験本番に向けてコンディションを最高の状態にするためには、日々の勉強計画がとても重要になります。
予備試験に合格すれば、念願の司法試験を受験することができるので、最後まで気を抜かずに勉強を続けていきましょう。

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