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「過去問は早く解き始めて、繰り返したほうがいい」
皆さんが何度も見聞きしたフレーズかと思います。
しかし、勉強をしている方にお話を伺ってみると、わかってはいるものの、時間がなくて実際には中々着手できていない、という方が多くいらっしゃる印象です。
確かに、通勤時間や隙間時間、仕事後の短い時間の中で講義を聞いて、復習をして、、とやっていると時間が取れないということも事実です。
では、どうすればよいかと言うと、講義視聴を進めるペースが一時的に落ちたとしても優先順位を上げて過去問を解く、というのが私の考えです。
※勉強を開始した時期や試験日までの残り時間によって変わりますので、取り入れるタイミングについて迷われている方はご連絡ください
以下では、その理由と具体的な過去問の活かし方についてお伝えします。
短答式試験も、論文式試験も、本質的な勉強法は条文の理解を深めること、という認識は皆さんお持ちかと思います。
では、条文の理解を深めるとはどういうことで、それをどこまでやればいいのか、明確にお答えできますでしょうか。
条文の理解を深めるということは、何となくわかります。
・その文言が示している内容について理解できる
・その背景について知る
・解釈がわかれる文言について判例の見解を知る
・条文同士のつながりを理解する 等。
では、合格するためにはこれらをどの水準までやり込む必要があるのでしょうか。
この問いに対して明確な回答はないかと思いますが、当たりをつけることはできます。それが、過去問です。
テーマごとに、数年分の過去問をまとめて解いてみると、全く同じ文章ではないものの、同じ内容について少し聞き方を変え繰り返し問われている肢があることに気づきます。
考えてみると、内容が重複してくるのも無理はありません。恐らく作問をする際には、条文の中で理解を問うべき箇所を決め、それに対して引っ掛けを作るという形で作問していると思います。
1つの条文の長さはそこまでありませんから、文言を単純に覚えているかだけでなく、その背景を知っているか、判例の見解を知っているか、他の似た条文との差異を正しく理解できているか、と問い方に工夫をしていますが、それでも十数年も経てば一通り問うべき内容について聞き終えてしまうでしょう。
過去問はあくまで、過去に出題された問題であるため、次の試験で出題傾向が変わる可能性はもちろんあります。ただ、あらゆることに耐えられる準備をするには時間がいくらあっても足りません。
テーマごとに、過去問の傾向からどの程度掘り下げて理解をすればいいのか把握できると、優先順位がつけやすくなります。
ネガティブに言ってしまうと、例えある条文について、内容を全て覚え、青本で背景も理解し、関連する判例を覚え、似た条文との差異も抑えて完璧にしたとしても、短答式試験においては1問分の正解にしかなりません。
もちろん、最終的には時間の許す限りこれらのことを各条文ベースで勉強していくことになりますが、どれだけ深く理解をしていても、正解するためのぎりぎりの知識しかないとしても、本番においては1問の正解という同じ結果の評価にしかならないという見方もできます。
まずは、各テーマ満遍なく、"ちょうど"合格できそうなレベルを目指し、次のステップでそれぞれ深掘りをしていくという割り切りが有効です。
この方法であれば、もし途中で時間切れとなり本番を迎えてしまったとしても合格できる可能性が高まります。
実際に私自身今の環境下で勉強を始めてみて感じたことですが、仮に、論文式試験を含め来年の合格を目指すのであれば、自分が理想とする水準まで力をつけることは現実的に難しいと思いました。
そのため、あくまで合格のための試験勉強と割り切り、1問を正解するための投下時間を意識することも大切であると改めて認識をしたところです。
前回ご紹介した方法(まずは全体像の把握)を行った後、テキストで発明の新規性・進歩性・新規性の喪失の例外に関するページを一読し、早速過去問を解きました(短答対策講座(特実第03回)添付問題 3-1~3-7)。
まずは、1肢1肢しっかりと問題文を読み、なぜ〇なのか、なぜ×なのかを理解します。
テーマによって異なりますが、新規性・進歩性・新規性喪失の例外については、実はこの時点でも各肢の問いの意味(何を聞きたいのか)が大方わかり、ある程度解ける問題もあります。
もし、まだ解かれていない方は実際に過去問に目を通してみてください。正解ができないとしても、問の論点がどこにあるのかはわかり、解説を読んだときに、ああそういうことか、となると思います。この時点では、正解できるかどうかは重要ではありません。
あくまで、この肢は、どの条文のどの論点を問うているのか、どのような問い方をされているのか、を具体的に把握することが目的です。
そして、内容について確認を終えたら、問いの対象となっていた条文の該当箇所をマーカーでチェックします(下記写真は参考例)。
文字の記入は最小限に留めます。スペースの問題もありますが、後から条文を見直す際にハイライト箇所の論点を自分の頭で想起できるようにするためです(書き込みをしたい場合は、「四法対照」にすることをお勧めします。そうすれば、法文集はアウトプット用の教材にできます)。
また、マーカーを引いた部分に該当する解説についても色付けをしておくと、内容を確認したくなった時にすぐに見つけられ時間の短縮になります。
今回、国内優先権や分割出願等、事前にテキストを確認していなかった内容は解けませんでしたので、解答を確認し、該当する条文とテキストの一部を読み理解できたものは、合わせて条文への書込みをしています。
※他の条文と関連するときは、お互いの条文にリファレンスを取り、どちらからでも関連する論点を想起できるようにします(下記参考例では、30条3項が【国内優先権41条2項】【特許出願の分割44条4項】と関連)
(参考例)特許法第30条
※過去問にも重要度や難易度の差はありますので、必ずしも一度に全て書込む必要もないかと思います。慣れるまでは判断が難しいかと思いますが、(自社でできておらず恐縮ですが)LECさんやTACさんが分析データを公表されていますので、このあたりも参考にしていただければと思います。
⇒LEC公表分析データ
⇒TAC公表分析データ
上記を実施することで期待できる効果は多くあります。
①例えば、条文を読むときに、ただ表面的に文言上の理解をするだけでなく、背後に隠れた論点を意識することで強弱をつけた読込みができます。
②また、過去問を解くのに時間がかかる要因として、問題文の長さ、解説の長さがありますので、それらを省略できます。
私も経験がありますが、短答の過去問は1肢1肢確認するため膨大な量となり、非常に疲れます。また、時間もかかるため敬遠しがちになったり、復習までに時間が空いてしまうと忘れてしまい、また確認のし直しという負のループに入ってしまいます。従って、その要因を除いてしまうことが効率的です。
③他にも、離れた関連条文を同時に確認することで体系的理解が進むことや、年明け以降の本格的な短答対策が精神的に楽になるといったことが挙げられます。
④メインとしては、短答対策の方法としてご紹介をしましたが、論文対策にも繋がっています。
条文を目にする機会が増えますので、自然と何条が何の規定ということが頭に入り引用力があがります。
また、条文を起点として論点を掘り下げていく訓練ができていますので、試験本番で貸与される法文集が心強い味方になります。
いかがでしたでしょうか。
もし、まだ過去問を解いていない、これまで漠然と過去問を解いていた、復習に時間がかかり中途半端になってしまっていた、という方がいらっしゃいましたらこの方法を取り入れてみていただければと思います。
決してこの方法で試験対策として十分ということではありませんが、得点力を上げるという意識を持つために、1つの方法としてご紹介をさせていただきました。
今回は、「得点力を上げる過去問の効果的な使い方」というテーマでお伝えをしましたが、授業やテキスト、青本等との連動はどうすればいいのか?と疑問に思われた方もいらっしゃるかと思いますので、今後その辺りもお伝えしていきます。
実際に勉強を開始されると、事前にはわかっていなかった悩みや迷い等が生じると思います。
それが原因で、勉強から離れてしまうという方も一定数いらっしゃいます。
そこで、そのようなことにならないよう、フォローアップイベントを定期的に開催します。
不安を解消し、自信を持って勉強を進めてください!